Cembalo, Clavicordo & Fortepiano
 J.S.バッハゴールドベルグ変奏曲/渡邊順生
 解説


 □成立事情/バッハ自身の手による改訂版
 □変奏の手法と変奏曲の種類
 □全体の構成
 □各変奏曲の特徴 前編
 □各変奏曲の特徴 後編
 □作品の内容的特性
 □ゴールドベルグ 表

 この作品は、ニュルンベルクの出版社バルタザール・シュミットから1741年あるいは42年に出版された。初版の際のタイトル・ページは、《クラヴィーア練習曲/2段鍵盤付クラヴィツィンバル(チェンバロ)のための/アリアと種々の変奏/より成る》となっている。バッハは、1726年にクラヴィーア独奏のためのパルティータ第1番を自家出版するに際して初めてこの『クラヴィーア練習曲 Clavier Ubung』というタイトルを使用し、後に6曲のパルティータを1冊にまとめて、これを『クラヴィーア練習曲集第1巻』とした。1731年のことである。以後、1735年には、「2段鍵盤付クラヴィツィンベルのための」《イタリア協奏曲》と《フランス風序曲》を収めた『クラヴィーア練習曲集第2巻』をライプツィヒのクリストフ・ヴァイゲルから出し、1739年に、「教理問答書及びその他の賛美歌に基づく種々のオルガン前奏曲」を中心とした『クラヴィーア練習曲集第3巻』を再び自家出版した。従って、この《アリアと種々の変奏》は、4巻目のクラヴィーア練習曲集ということになる。この作品は、多分出版される1年ほど前――1740年頃――には完成していたであろう。バッハのクラヴィーア作品中、文字通り、最も規模の大きなもので、その中でバッハは、フーガやカノン、組曲やトッカータ、ソナタ、協奏曲等、およそ彼がこの分野で取り組んできた厖大な仕事の総決算を試みている。その長大さ、また多彩さ、そして、作曲者の無限の想像力と無類の作曲技法を示しているという点において、さらに演奏の困難さにおいても、正に空前のものであった。
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