Cembalo, Clavicordo & Fortepiano
 J.S.バッハゴールドベルグ変奏曲/渡邊順生
 解説


 □成立事情/バッハ自身の手による改訂版
 □変奏の手法と変奏曲の種類
 ■全体の構成
 □各変奏曲の特徴 前編
 □各変奏曲の特徴 後編
 □作品の内容的特性
 □ゴールドベルグ 表

全体の構成

 30曲の変奏曲は、ちょうど真ん中で2つの大きな部分に分けられ、それぞれの部分に導入とクライマックスがある。言い換えれば、変奏曲全体の流れにも、起承転結があるのである。
 B・C両グループの変奏が尋常ならざる書法によっているだけに、Aグループの変奏は聴き手をも弾き手をもほっとさせる。特に曲が進んで緊張感が高まって来るに連れ、Aグループの安堵感がきわだって来る。それに対して技巧的なBグループの変奏は軽快且つ華やかであり、逆にポリフォニックなCグループの変奏は重厚で渋みがある。このように3曲ずつ性格の異なる変奏が規則的に配置されていることは、この長大な作品を聴きやすいものにしているのだが、全体を有機的で説得力のあるものとするために、最初の6つの変奏と最後の6つの変奏でバッハはその規則性を自ら毀しているのである。
 先ず、最初の6つの変奏で、Bグループの変奏を導入することにバッハは極めて慎重である。ここでは、作品全体がバス主題に基づく変奏であることを強調するために、バス主題の様々な変奏技法が示される。変奏曲の種類としては、Aグループの変奏が並ぶことになる(第1、2、4変奏)。第3、6変奏の2つのカノンでも、バスの細かい動きが強調される。
 第10変奏から前半の終結が意識される。このあたりから、各変奏間のコントラストが大きくなって行く。そうした落差の拡大と、第12、15変奏の2つの反行カノンにおける音楽的緊張感の高まりが、前半のクライマックスを形成する。
 第16変奏は「序曲」というタイトルが示すように新たな始まりであり、それに続く変奏で軽快な足取りが示されるが、やがてBグループの緊張が高まることによって、各変奏間のコントラストが広がって行く。
 第25変奏から全曲の終結部に入る。第25変奏は全曲中最もテンポがおそく深い情感を湛えているが、その沈潜の淵から光り輝く頂点へ向けての上昇が始まる。ここでは軽くて技巧的なBグループの変奏が並ぶことで、Aグループの並ぶ冒頭部とのバランスが考慮されている。そうした流れの中で、第27変奏にもBグループの性格を兼ね備えた変則的なカノンが置かれている。

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