イスラエル・フィルの演奏会に登場した
カーク・ダグラス

(写真はデビュー後まもない頃のカーク・ダグラス[1949])


 私の連れ合いはヴァイオリニストなのだが、彼女が今年の7月、さる日本の演奏団体の一員として、イスラエルに演奏旅行した際のことである。たまたまテル・アヴィヴで空き日があって、親しい仲間と一緒に、イスラエル・フィルハーモニーの演奏会を聴きに出かけたところ、演奏の始まる直前に、カーク・ダグラスがステージに上って来て、「私が何故ここにいるのか、自分でもよくわかりませんが・・・」と前置きして、ソリストの一人が出演不能になり、それに伴って演奏曲目が変わる旨を告げたというのである。カーク・ダグラスは今年で84歳になるはずだが、数年前に、アカデミー特別賞を貰うために授賞式に登場したときの様子は、ろくに呂律も回らず立っているのがやっと、といった風情で、往年の彼の風貌を知る者にとってはまことに痛々しい限りであった。息子のマイケル・ダグラスがやたらと感涙にむせんでいたのが印象的だった。それが、今回のイスラエルでは、矍鑠(カクシャク)としていたというので嬉しくなった。多分彼はたまたまイスラエルで休暇を楽しんでいたのだろうが、イスラエル・フィルもなかなか味なことをする、と思ったものである。

 私は、彼の映画は随分見ているが、『地獄の英雄』(1951)、『探偵物語』(1951)、『悪人と美女』(1952)、『突撃』(1957)、『バイキング』(1958)、『スパルタカス』(1960)、『5月の7日間』(1964)などが特に強く印象に残っている。早川書房から翻訳が出た彼の自伝は、私の知る限りでは、俳優の書いた自伝としては最も面白いものの一つで、上下2巻を一気呵成に読んでしまった覚えがある。



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